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2015年秋ニューヨーク「旅の流儀」①「NRT」

*この記事は2015年秋のニューヨークへの旅をまとめ発表した「旅の流儀」という原稿をこのブログへの再掲載のために回想録というスタイルで新たに修正加筆したもので、不定期に連載を重ねていく予定です。

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 旅は目的地に着いて始まるものではなく、地球儀をくるりと回すところから始まる。
 今回、私が地球儀に人差し指を置いたのは、ニューヨーク。

 2年ぶりの成田空港からのフライト。
 第3ターミナルが稼働しはじめた成田は昨今LCCゲートウェイ空港として新しい可能性を模索しているが、私が本格的に旅を始めた90年代は世界中からのエアラインがこの成田に翼を広げ離発着し、華やかな賑わいにあふれていた。
 今考えると、航空会社のカウンターでチェックインして、セキュリティチェックから出国手続き、免税店があって搭乗ゲートがある、ごくごく当たり前のこの空港の存在に昔はなぜあんなにワクワクできたのだろうか?
本屋で抱えきれないほどのたくさん雑誌を買ったり、寿司屋でお寿司をつまんだり、免税店で早くもお土産を漁ってしまったり、外貨を両替したり、搭乗ゲートの前の売店でビールを3杯も飲んでしまったり、搭乗時間にゲートの前のたどり着く頃には、もうほろ酔いで、短い旅をひとつ終えたような気分になったものだ。
 旅慣れたからだとは思わないが、今は航空会社のラウンジやガラス張りの搭乗ロビーの片隅で、小さなバッグをひとつ抱え、出発の準備をする飛行機を眺めながら、白ワインをグラスに一杯飲みながら、本も読まず、WiFiの電波をさがしてスマホやノートパソコンを叩いたりもせず、ぼんやりといままでのいくつもの旅を少しだけ想い返してみる。
成田から飛んだディスティネーションはいくつだっただろう?
 アメリカにも、ヨーロッパにも、アジアにもアフリカにもオセアニアにもこのNRTが出発点だった。
 ひとつひとつの旅は、今も大切な私の財産だ。
 
 やがて搭乗案内が聞こえる。
 フライトは定刻通り。
「旅に出るなら、夜の飛行機・・・」
 今回のニューヨーク行きは19:40発のJAL004便だ。約12時間の飛行時間、13時間の時差のいたずらでニューヨークには出発と同じ日の同じ夕刻に到着する。

 静かに。
 誰にも知られずに、誰にも告げずに。
 この大好きで、そして大嫌いなこのTOKYOを静かにテイクオフする。
軽いワインの酔いとともにジェット機の上昇のGに体を委ね、少しウトウトとする。
 そして久しぶりのニューヨークに頭の半分はわくわくとしてくる。
 あの街で待ち構えているものは一体なんなのだろう
 あの街で抱きしめてくれるのは、殴りかかってくるものは一体誰なのだ ろうか?

 

 

ルートシックスイン

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東京は雨。12:20羽田発のJAL便は機材到着遅れで、結局、定刻の約1時間遅れの午後4時に那覇空港到着。レンタカーをピックアップして那覇から車で約一時間。途中で今夜のワインを手に入れて到着したころには、もう日はとっぷりと暮れていた。

その建物の玄関は海沿いの宿のネーミングにもなっている県道6号線から一本入った路地にあった。南カリフォルニアのサンディエゴあたりのファサードを感じるまぶしく高い白壁。パンチング・メタルのドアが開き、主人と奥様、そしてうれしそうにくるくると回る2匹の犬、奥から顔を出すもう一匹、レトリバーの老犬、そしてのっそりと太った一匹の猫が出迎えてくれた。

ルートシックスインの敷地に一歩入ると、夜のやわらかいとばりを感じて、時間の秒針の動きが少しだけゆっくりになったような気配がする。

一階の小さなバーカウンターがあるロビースペースで簡単なレセプショの後、2階の客室へ案内される。ユニットは2つ。階段をあがって左がダブルベッド・ルーム。右がツインベッド・ルーム。どちらもこだわりのウォーター・ベッドとジェットバスなどが完備。室内は華美ではない落ち着いた調度。タオル、リネン類やアメニティもいいもの選んで使っている。バリ島のアマヌサあたりのコテージに迷い込んだ錯覚だ。インテリアは奇をてらわないが、主のひとつひとつへアイテムのこだわりが伝わってくる。

 

広いベランダに出る。夜の海風が心地よい。

那覇空港から車で約一時間の読谷の夜はダークネスでサイレンスだ。

もしかしたらこの宿は世界中のリゾートを遊び尽くした大人が最後にいきつく、静寂な場所かもしれない、そんな気持ちになる。まるで、沖縄に秘密で借りてある隠れ家にでも帰ってきたような、おだやかな、ほっとした気持ちになれる。

 

ルートシックスインの正しい滞在の仕方は、季節によっても異なるだろうが、まず朝日が差しこむゴージャスなバスルームのブラインドを開けて、海を眺めながら、ジェットバスの浴槽で朝風呂を楽しむことから始めよう。Tシャツと短パンで過ごせる季節が一年のうち8か月はあるだろうから、そんなカジュアルな出で立ちで部屋でコーヒーを淹れて飲んだ後は、ドアの向こうで遊ぼうと呼びに来る犬たちとプールサイドで遊ぶのもよし。ベランダでなかなか読めなかった新聞や本を読んだり、音楽を聴いたりもいい。そして朝食がてらあたりをあちこち長い散歩や車で外出をしてブランチもいい。やちむんの里あたりをのんびりと焼き物を見てまわるのも悪くない。

夕方は早めに帰ってくること。実は着いた夜には気が付かなかったが、部屋には極上の屋上あったのだ。それを教えてくれたのが写真の犬のレオだ。レオが屋上への階段に案内してくれた。この屋上には海に向かって遊び心満載の石造りのカウンターテーブルまでしつらえてある。

海を正面に夕日は左手の残波岬に沈む。夕日が沈んだ後、空がオレンジからパープルに変わっていくマジックタイムが素晴らしい。このマジックタイムにこの屋上でよく冷えたイタリアの辛口の白ワインでも海風といっしょに飲もう。

もし大切な人といっしょの旅であれば、余計な言葉はいらない。

やがてこのルーフトップに星が瞬きだすまで、のんびりと佇もう。

都会の煩雑さを捨てて、ひとりでのんびりと大切な人生を想うのもよし。

たとえば、ちょっと仕事とか、恋愛とか、そんなことに疲れた人。ぶらりと旅に出てみたくなった人。

はしゃいだり、騒いだり、そんなことも卒業した大人で、ふたりの時間を静かに大切に過ごしたい人にもこの極上の時間と空間はおすすめだ。

一階は主人のご自宅。その自宅エリアにつながっている大きなガレージは大人の宝箱。よく手入れをされた1990年のポルシェ911が週に一度のドライブを待ちどうしそうに眠っている。ガレージの壁には映画「イージーライダー」のポスター。昔はハーレーをはじめとして大型バイクも乗りついできた、主人の稲葉さん、すこし「やんちゃ」だったのかな?その広いガレージの隅々に毛布を敷いて寝ている犬たちはどれも近所に捨てられていたり、動物病院からもらってきたりした犬たち。

みんな稲葉さんに出会って幸せを手に入れた。

 ルートシックスインは日本を、世界を旅して来た、大人のための隠れ家だ。この読谷の静かな夜を目を閉じて感じられるセンシティブな人だけに来てほしい。

きっと、この宿は一年後、二年後には沖縄でも最も予約が取りにくい宿のひとつになってしまうだろう。

その前にあなたがこの宿を訪れることができることを願ってやまない。

 

 

沖縄、読谷へ。

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いつの頃からたまに沖縄に通うようになった。
仕事で海外に行くことがあったり、所用で関西に行くのに、なるべく飛行機に乗ったりしてマイレージをせっせと貯めこんでは、一年に一度は思い立つように沖縄を訪れる。
沖縄には悠久の琉球王国のスピリチャルな癒しの時間が流れている。以前は離島を訪れることもあったが、ここ何年かは沖縄本島を究めようという気持ちだ。
ネット予約しておいて那覇空港から気軽に利用できるレンタカー。

高速道路が走っていて南北に長い沖縄本島のあちこちに向かえる。
ここ何年かは今帰仁城がある本部半島あたりが気に入って、名護や本部の町で新鮮な沖縄の食材を買いこんでは、フクギ並木で有名な備瀬の一軒家のビーチハウスを借りてみんなで滞在するのが好きだったが、最近はもっぱらひとり沖縄だ。
ひとり旅が好きになったのには、実はもうひとつ理由がある。最近、ネットオークションで偶然目にして、衝動的に落札してしまった新品未使用のパタゴニアの「ブラックホール25L」の青色のバックパック。このパタゴニアの青い色は「Under Water Blue」と呼ばれていて、私はこの色味はもちろん、「Under Water Blue」というネーミングがとても気に入ってしまった。
私はこのバックパックを手に入れて、おかしな決意をした。
「そうだ!この青いバックパックといっしょに日本を、世界のあちこちを旅しよう。
機内持ち込みで足元に転がせる比較的小さなリュックに大量の荷物は入らないのはわかっている。きっと2~3日分の最低限の身の回りのものしか入らないだろう。
でも、いままで、世界中を旅したときになんでも詰め込んで引きずって持ち運んでいた大きなゼロハリバートンのスーツケースに、いったい何の意味があったのだろうか?
身も心に一糸だけをまとい、まさに着の身、
着のままで、山頭火のように虚飾を排し、自由な風のようになって、もう一度旅をはじめようではないか。人は生まれたときは裸でしょせん死ねば、風に舞う砂塵だ。旅も断捨離。何かが必要になったらその場で考えればいいではないか。
 そんな投げやりで潔い気持ちになれるのはやはり、歳をとったせいに違いないとも感じるが、とりあえず、私の「Under Water Blue Trip」は何の脈絡も合図もなくはじまった。
第一回目は沖縄・読谷。
何気なくクリックしていたトリップアドバイザーで、とても泊まってみたい気になるアコモデーションを見つけてしまったからだ。
その宿の名前は、「ルートシックスイン」。

春なお冷たい雨の降る3月の中旬、その旅は始まった。

UNDER WATER BLUE TRIP

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そっと深呼吸、ちょっと不思議、かなり癒し。
さびしがりやのおじさんの魂が気持ちよさそうに、波にただよっていく
もう人生も夕暮れ時。
魂の極上サンセットをさがす、スピリチュアル・トリップ。...
ロンリー・パラディーソ。
気まぐれ桃源極楽漂流記

旅人の名前はリョウヘイ・マルチニーク。

旅することにゆる~い「きまり」を持っている。

まず、ひとり旅であること。
宿は一泊1万円以内であること。
 毎晩おいしいお酒とおいしい地元の肴をさがすこと
原則として何泊の旅であろうと旅の荷物はお気に入りのパタゴニアの25Lのリュックひとつだけであること。

リョウヘイは旅人のパスポートに書かれた名前。
マルチニークは「世界で最も美しい場所」とコロンブスが呼び、彼を魅了したマルティニーク島から。
その語源は島に住んでいた、カリブ人の言葉でマディニーナ(Madinina、花の島)、またはマティニーノ(Matinino、女の島)。

 

旅はいつも突然始まる。
旅したいな、と思う時が旅のスタート。
 地下鉄の窓に自分の老け込んだ顔を見つけたとき。ひんやりとした夜風が心地よい商店街をあるくとき。テレビの前で足の爪を切っているとき。お気に入りのカリフォルニアの赤ワインを買って、代官山のシェ・ルイのバケットに生ハムとルッコラをはさんでかぶりついたとき。ひさしぶりにイーグルスの「New Kid in Town」を聴いたとき。心の地球儀がぐるりと回りはじめた。

そして、偶然手に入れた青色の「Under Water Blue」。

私はおかしな決意をした。

そうだ!この青いバックパックといっしょに自由な旅をはじめよう。